棘のある言葉について

鋭さを孕んだ、耳が痛くなるような言葉を「トゲがある」と表現することがあるが、どうせ棘のある言葉を聞くのなら美しい女性から聞きたいと思う。

女性の言葉の持つトゲは薔薇のそれである。耳が言葉を受け取る時、同時に僕の指は薔薇の棘に触れている。指先に走る痛みよりも先に、棘に触れられるくらいには高嶺の花に近づくことができたのだという恍惚が脳に届く。薔薇の花弁の色は唇の色だ。指先から流れる血の色は、薔薇の色と同じくらい、鮮やかで深い紅色をしているだろうか。動く唇を見つめることしかできず、それを確認する術もない。